成年後見には法定後見と任意後見がありますが、ここでは法定後見を中心に説明します。
後見人は、本人に代わって財産を管理し、契約や手続きをして生活を組み立てるために3つの権限を持ちます。
1つ目が「代理権」です。後見人が本人に代わって銀行の窓口で預金を引き出したり、必要であれば口座を解約することができます。また新聞の定期購読や介護サービスの契約をするときに後見人が本人の代わりにサインをすることができます。
2つ目は「取消権」です。本人がしてしまった必要のない契約を後見人が取り消すことができます。判断能力が低下した本人を被害から守るために必要な権限です。
3つ目は「同意権」です。本人がお金を借りたり誰かに財産を譲るといったときに、判断能力の低下から本人の決断が間違っていたりだまされていたりする可能性があります。こうした場合に、本人が一人で交わした契約は有効とはならず、後見人の同意が必要になります。
後見人の法的権限は、本人の権利を制限してしまうものでもあります。そのため、成年後見制度の利用にあたっては判断能力の低下を客観的に証明することや事前の手続きをする必要があります。権限の行使に際し、後見人には慎重な判断が求められます。
法定後見で、後見人等に与えられる法的権限
代理権 | ・成年後見人等が本人に代わって契約などの行為をする権限 ・成年後見人がした行為は、本人がした行為として扱われる ・代理権は財産や生活の組み立てに関する法律行為に限定され、結婚や離 婚、遺言の作成などは代理できない ・成年後見では全面的に、補佐・補助では選択的に与えられる権限 |
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取消権 | ・本人がした法律行為が本人にとって不利益であると判断した場合に、取 り消すことができる ・日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消すことがで きない ・成年後見でのみ与えられる権限 |
同意権 | ・本人の行為に成年後見人が同意することで、法律的な効果が認められる ・後見人等の同意を得ずにした契約は取り消すことができる ・補佐、補助で選択的に与えられる権限 |